専門解説・コラムへ戻る

サブリース解除

「2か月前に言えば解約できる」はずのサブリース…拒否されたオーナーが立退料ゼロで勝訴した裁判事例を解説!

サブリース契約を締結する際、「2か月前に予告すればいつでも解約できます」などといった説明を受けたり、サブリース契約書に解約金を支払えば解除できるかのように書かれていることを信じて契約したオーナー様は少なくありません。しかし、いざ解約を申し出ると、業者側から「借地借家法で守られているため、2か月前予告の特約は無効だ」「正当な理由がなければ解約に応じない」と拒絶されてしまうトラブルが多発しています。 今回は「不動産オーナー側が立退料を1円も支払うことなくサブリース契約の解約を認めさせた」という内容の裁判事例(東京地判 平成15年11月17日)を解説します。

公開日 2026年10月12日監修:甲斐伸明 弁護士

こんにちは、弁護士の甲斐伸明です。

サブリース契約を締結する際、「2か月前に予告すればいつでも解約できます」などといった説明を受けたり、サブリース契約書に解約金を支払えば解除できるかのように書かれていることを信じて契約したオーナー様は少なくありません。

しかし、いざ解約を申し出ると、業者側から「借地借家法で守られているため、2か月前予告の特約は無効だ」「正当な理由がなければ解約に応じない」と拒絶されてしまうトラブルが多発しています。

今回は、不動産オーナー側が立退料を1円も支払うことなく、サブリース契約の終了(更新拒絶)と建物の明渡しを認めさせた裁判例(東京地判平成15年11月17日・平成15年(ワ)第7292号)を解説します。

1. どんなトラブルだった?(事案の概要)

本件は、共同住宅など4棟の建物を所有するオーナー(原告)が、転貸(サブリース)目的でこれらを一括して賃貸していたサブリース業者(被告)に対し、契約の約定に基づく解約などを主張して、建物の明渡しを求めた裁判です。4棟の賃料は合計で月額約455万円にのぼります。オーナーとサブリース業者の間には、以下のような契約条項が結ばれていました。

・ 期間満了の2か月前までに書面による意思表示がない場合は2年間自動更新する。

・ 当事者のいずれか一方の都合により解約するときは、2か月前に書面で予告することにより契約を終了できる。

・ 契約終了時には、オーナーが当然に転貸人(業者)と転借人(実際の入居者)との間の転貸借契約を引き継ぐ(地位を承継する)。

オーナーは、平成14年11月12日、弁護士を通じて、4棟のうち1棟については約定の「2か月前の予告」による解約を申し入れ、残る3棟については更新拒絶を通知しました。ところが業者は「借地借家法30条により無効である」と回答し、裁判でも「期間の定めがある以上、借地借家法の要件を満たさない更新拒絶・解約申入れは効力を生じない」「正当事由もない」と主張して明渡しを拒みました。

2. 裁判で争われたポイント

主な争点は、①約定の「2か月前予告」による解約申入れ・更新拒絶に効力があるか、②オーナー側の更新拒絶に借地借家法28条の「正当事由」が認められるか、という点でした。

なお、オーナー側は当初、サブリース契約には借地借家法が適用されないとの立場でしたが、訴訟の途中で、サブリース契約の賃料減額請求に借地借家法の適用を認めた最高裁判決(最判平成15年10月21日)が出たため、同法の適用自体は争わないことにしました。

業者側は、オーナーは他の不動産業者と契約したいだけで建物を使用する必要性はない、2か月前予告の条項は一般的な契約書の書式にならっただけである、転借人にとっても貸主が変わるという不利益がある、などと主張しました。

3. 裁判所の判断〜なぜ立退料ゼロで契約の終了が認められたのか?〜

裁判所は、まず、サブリース契約にも借地借家法が適用されることを前提に、平成14年11月12日の通知は、契約期間の途中のものであり、しかも期間満了の1年前から6か月前までの間(借地借家法26条1項)にされたものでもないから、効力を生じないと判断しました。つまり、契約書の「2か月前予告」条項どおりの解約が認められたわけではありません。

そのうえで、4棟のうち3棟については、裁判の途中で期間満了の1年前から6か月前までの時期が到来しており、オーナーが訴訟を維持していること自体を更新拒絶の通知と評価できるとし、この更新拒絶には正当事由があると判断しました。

その結果、業者に対し、各契約の期間満了日(平成16年1月31日、同年3月31日、同年7月31日)が経過したときに各建物を明け渡すよう命じ(転借人のいる建物については「指図による占有移転」を求める趣旨と解されています)、満了日の翌日以降の賃料相当損害金の支払も命じました。

他方、残る1棟(2か月前予告で解約を申し入れたもの)は、約定により平成16年11月30日まで契約が更新されており、判決の時点ではまだ更新拒絶の時期が到来していなかったため、明渡請求は認められていません。また、平成15年4月15日からの賃料相当損害金の請求も、各期間満了日より前の部分は退けられており、オーナーの一部勝訴という結果です。

裁判所が更新拒絶の正当事由を認めた主な理由は、次のとおりです。

1.オーナー側の事情

⑴ オーナーは、約定どおり2か月の予告期間で解約できると考えて通知したのに、業者から「借地借家法30条により無効」との返答を受けたのであり、オーナーが業者の態度を不信に思ったとしても無理からぬ面があること

⑵ サブリース契約の実体は主としてオーナーの賃貸用建物の管理にあり、準委任に近い側面を持つことから、当事者間の信頼関係が基礎となる部分が大きく、「自分の信頼する者と契約したい(自分の希望する方法で管理したい)」というオーナーの希望も、保護に値するものとして相応に考慮すべきこと

2.サブリース業者側の事情

 ⑴ サブリース業者の利益は「生活拠点」ではなく「ビジネス上の差益」

 借地借家法は、本来、賃借人が建物を使用する利益を保護するものです。サブリース業者の利益は、建物を転貸・管理して得る賃料の差額(金銭的利益)であり、法による保護を全く否定することはできないにしても、法が本来保護する利益とは異質なものであるから、その限度で保護されるにすぎないこと

 ⑵ 業者が自ら作成した契約書であった

 業者の上記利益は、契約上、2か月の予告期間で失うことが予定されており、しかもその条項は不動産管理を業とする業者自身が作成したものでした。そのため、業者自身も、契約締結の際に契約継続の利益をさほど重視していなかったとみられてもやむを得ないこと

3.その他の事情

入居者の居住権・生活はしっかり保護されている

 契約終了時にオーナーが入居者との転貸借契約をそのまま承継する約定になっていたため、実際に居住している転借人の生活環境や居住権は脅かされないこと

【結論】

 裁判所は、オーナー・業者双方の必要性はいずれも「収益物件としての利益」であるとしたうえで、サブリース契約としての特殊性と上記の諸事情を考慮し、立退料の支払がなくても、更新拒絶に正当事由が備わっていると判断しました。なお、本件ではオーナー側から立退料の申出はされておらず、判決も立退料には触れていません。

4. この判例から不動産オーナーが学べる3つのポイント

  • オーナー側の必要性が「信頼できる業者に任せたい」という程度でも正当事由が認められたこと

本件でのオーナー側の事情は、「自分の信頼する業者に任せたい(自分の希望する方法で管理したい)」という程度であり、近年のサブリース解約裁判例に照らしても最も弱い部類といえます。それでも、サブリース契約の準委任的な性質から、この希望が正当事由の判断で「相応に考慮」されたという点で、参考になる裁判例です。もっとも、地位承継条項によって入居者の保護が確保されていたことや、業者自身が2か月前予告の条項を作成していたことなど、業者側の事情もあわせて考慮された結果である点には注意が必要です。

  • 立退料なしで正当事由が認められたこと

立退料なしで正当事由が認められるのは、近年のサブリース解約裁判例の傾向からすれば若干特殊です(例えば東京地判平成27年8月5日は立退料50万円との引換え、東京地判令和元年11月26日はオーナーの提示した立退料が少なすぎるとして正当事由を否定)。ただ、双方の事情を天秤にかけて優る方を勝たせ、どちらが優るか微妙なときだけ立退料で補完するという、正当事由の判断方法の原則には忠実といえます。

  • 通知の時期(期間満了の1年前から6か月前まで)を守ること

本件では、契約書の「2か月前予告」に従った当初の通知は、期間の途中のものであり、期間満了の1年前から6か月前までの間(借地借家法26条1項)にされたものでもないとして、効力を否定されました。オーナーが勝てたのは、裁判の途中で通知期間が到来し、訴訟の維持が更新拒絶と評価された3棟だけで、通知期間が到来していなかった1棟は請求が認められていません。サブリース契約を終わらせたい場合は、契約書の予告期間ではなく、借地借家法の通知期間(期間満了の1年前から6か月前まで)に、内容証明郵便など到達を証明できる方法で更新拒絶を通知することが重要です。

5. まとめ

「サブリース契約は絶対に終わらせられない」「必ず高額な立退料が必要だ」と思い込んで諦める必要はありません。もっとも、正当事由の有無や立退料の要否・金額は個々の事情によって大きく異なり、本判決のように立退料なしで認められるケースは多くありません。また、通知の時期を誤ると、それだけで請求が認められないこともあります。サブリース業者との解約トラブルでお悩みの方は、諦めずに、早めに弁護士にご相談されることをおすすめします。

お問い合わせはこちらから→https://sublease-navi.com/

執筆:甲斐 伸明

ISSUE GUIDES

お悩み別の詳しい解説

監修者

甲斐伸明 弁護士(東京弁護士会)

弁護士法人SOLLIEVO法律事務所

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案に対する法的助言や解決を保証するものではありません。